人工知能や機械学習で注目が集まる「Python」とはどんなプログラミング言語?
昨今、注目を集めているプログラミング言語のひとつに「Python」があります。
ウェブサービスの開発や、人工知能(AI)、教育分野など、幅広い場面で活用されており、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が執り行う基本情報技術者試験でも2020年春から試験の出題にPythonが追加されることが決まりました。
Pythonとは一体どのような言語なのでしょうか。
この記事では初心者に向けたPythonの基本やPythonを学ぶための方法などについて解説を行っていきます。
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プログラミング言語「Python」とは?
Pythonは、1991年にオランダ出身のプログラマーであるGuido van Rossum(グイド・ヴァンロッサム)氏によって開発・発表されたプログラミング言語です。
イギリスの人気コメディ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』が名前の由来で、ロゴにもニシキヘビをモチーフとしたデザインが用いられています。
Pythonは多種多様なプログラミング言語の中でも特にシンプルに設計されており、誰が書いても同じようなコードになるという性質を持っています。
また、文法にインデント(字下げ)を使用するなど、プログラム作成者以外が読んでも何のコードかひと目で分かりやすいのも特徴です。
つまり、Pythonは「書きやすく、読みやすいプログラミング言語」であり、初心者プログラマーにとっても学びやすい言語なのです。
他にも、オブジェクト指向を取り入れた言語なので複雑な処理が必要とされるプログラムを組むことができる点や、豊富な拡張ライブラリによってAIやウェブシステムなどのさまざまなアプリケーション開発に利用可能な点などもPythonが人気を集める理由でしょう。
Pythonでどんなことができる?
Pythonはさまざまな分野で幅広く活用されている汎用性の高いプログラミング言語です。
代表的なものとして、以下のような場面でPythonが用いられています。
- 人工知能や機械学習の開発
Pythonが近年急速に注目を集める理由の1つとして、AIを搭載したソフトウエア開発に活用されていることが挙げられるでしょう。
Pythonは信頼性の高さやシンプルさから、多くの企業でAIエンジニアの標準言語として用いられています。
また、機械学習向けのライブラリやフレームワークが豊富で、効率的な開発が可能な点も大きな魅力です。
- アプリやウェブサービスの開発
JavaやC言語などと同様に、Pythonを使ってアプリケーションやウェブサービスの開発が可能です。
例えば、「YouTube」や「Instagram」などのおなじみのサービスの開発にPythonが利用されているのは有名でしょう。
その他、昨今話題のバーチャルユーチューバーなどの3DCGモデルを作成できる「Blender」というソフトウエアもPythonによって開発されています。
- インターネット上の情報の取得
ウェブサイトにアクセスし、インターネット上の情報を取得してデータを抽出する技術のことを「スクレイピング(ウェブスクレイピング)」と呼びます。
Pythonには「Requests」や「BeautifulSoup」など、スクレイピングを行うためのライブラリが豊富にあるので、簡単にプログラムを組むことが可能です。
- Excelの自動化
多くの業務に欠かせないExcelでのデータ集計や整理ですが、大量のデータを手動で処理しようとすると手間がかかる作業です。
Pythonで組んだプログラムをExcelに読み込むことで、データ集計、データ削除、シートの結合やグラフの描画といった操作をすべて自動化でき、工数の削減が可能です。
Pythonの基本的な構文を解説
【Pythonの基本構文】
まずは、Pythonでの四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算の名称)を説明していきます。
以下の図では、変数「num1」「num2」にそれぞれ値を代入して「足し算」「引き算」「掛け算」「割り算」を実施しています。
num1 = 10
num2 = 5
print("num1 + num2 = ", num1 + num2)
print("num1 - num2 = ", num1 - num2)
print("num1 * num2 = ", num1 * num2)
print("num1 / num2 = ", num1 / num2)
実行の結果は以下の図となります。
num1 + num2 = 15
num1 - num2 = 5
num1 * num2 = 50
num1 / num2 = 2.0
【if文による条件分岐】
if文とは、ほとんどのプログラミング言語で使われる条件分岐処理(プログラミングにおける処理の分類)のことを指します。
例えば、「もし年齢が20歳以上だったら○○を実行する」といった処理を行う場合を考えてみましょう。
以下の文は、変数abcの値が20より大きければprintで結果を出力しています。
if 20 < abc:
print("abcは20より大きいです。")
実行結果は以下の図になります。
abcは20より大きいです。
【for文による繰り返し処理】
for文は指定した回数同じ処理を実行するときに使用します。
例えば、「Hello World!」という文章を5回繰り返したい場合は以下のように記述します。
for i in range(5):
print("Hello World!")
実行結果は以下の図になります。
Hello World!
Hello World!
Hello World!
Hello World!
Hello World!
プログラミング初心者がPythonを学ぶ方法は?
Pythonは文法が必要最低限に抑えられ、無料で学習ができるサイトが多く、エンジニアを目指す方々にとって学びやすい環境が整っています。
プログラミング初心者がPythonを学ぶための方法として、まずはPython公式ドキュメント内でのチュートリアル問題を解くことをおすすめします。
その後、基本的な知識を深めたら「paizaラーニング」という学習コンテンツの無料講座を利用して基礎知識の底上げを行い、「paiza.IO」にて応用編を解くといった流れが良いでしょう。
paizaラーニングの入門編では、1つの動画(約3分程度)が合計約2時間分用意されており、動画観覧や演習問題を通してPythonの初歩知識が身に付くとされています。
より本格的にPythonを学びたい方は、無料のサービスだけでなく、有料のサービスやコンテンツを併用して利用してみてはいかがでしょうか。
以下、「ウェブの有料サービスの利用」「書籍の購入」「セミナーや勉強会への参加」の3つを例に挙げてそれぞれご紹介します。
ウェブの有料サービスを利用した勉強
- 「PyQ」
PyQは、Pythonを専門とするオンライン学習サービスで、メリットとして初心者のうちは手間がかかる環境構築が要らない点が挙げられます。
Pythonの文法だけでなく、ウェブアプリ開発をはじめ、統計分析や機械学習、スクレイピングといった幅広くコースが用意されています。
- 「Udemy」
一方のUdemyは、動画視聴型のオンライン学習サービスです。
講義動画を視聴するスタイルが特徴で、自分のペースで取り組めるのが魅力的と言えるでしょう。
また、こちらのサービスはPythonやその他のプログラミング言語のみならず、ビジネス、デザインなど幅広いジャンルを取り扱っています。
Pythonを始めたての方におすすめの書籍一覧
- コーリー・アルソフ著・清水川 貴之監訳『独学プログラマー』
(日経BP社:https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/C92270/)
- 辻真吾著『Pythonスタートブック』
(技術評論社:https://gihyo.jp/book/2018/978-4-7741-9643-5)
- Bill Lubanovic著・斎藤 康毅監訳・長尾 高弘訳『入門Python3』
(オライリー・ジャパン:https://www.oreilly.co.jp/books/9784873117386/)
セミナーや勉強会への参加
Pythonのセミナーは全国各地で開催されており、技術レベルの相互向上や育成、技術者同士の交流を目的として、初心者から上級者、学生から社会人までさまざまな背景を持つ方々が集まっています。
苦手を克服するヒントを得たり、自分だけでは知りえなかった新しい知識や考え方に触れたりすることも可能でしょう。
セミナー情報をまとめて掲載している有名なウェブサービスを2つご紹介しますので、自分のレベルや目的に最適のセミナーを見つけて積極的に参加してみてください。
- 「TECHPLAY」
TECHPLAYは、テクノロジーに関するイベントや勉強会の情報を網羅的に掲載しているサービスで、パーソルキャリアが運営しています。
一覧からエリア、テーマに関する「タグ」が登録できるため、自身のスケジュールに合わせた検索が可能です。
- 「connpass」
connpassでは、勉強会ごとにグループを作ることができます。
グループメンバーになることによって、参加したことのないセミナーや勉強会であっても開催告知を受けることができます。
Pythonを学習したら認定試験にチャレンジしよう
Pythonには、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が主催するエンジニア認定試験があります。
この試験はPythonの基本的な文法や基礎知識などを問う内容で、2017年6月より開始されました。
また、2019年夏からは、データ分析についての知識を問う「エンジニア認定データ分析試験」も開始を予定しています。
学んだ知識やスキルがどれぐらいのものか、実力を確かめる場として活用するのが良いでしょう。
Pythonをエンジニアが選ぶ理由とは?
日経 xTECHが2018年10月に実施した「プログラミング言語実態調査」によると、今後スキルを磨きたいプログラミング言語の第1位はPythonでした。
また、他社が発表しているランキング調査でも、PythonはJavaやC言語などとともに上位に位置しており、人気のプログラミング言語としての地位を確立しつつあります。
昨今のAIシステム導入の加速により、機械学習分野を得意とするPythonへの需要は高く、AIプログラミングにPythonが必修と言われているほどです。
しかしながら、Pythonのエンジニアは依然として足りていないため、市場価値が高く、他のエンジニアと比較して年収も高くなりやすい傾向にあります。
Pythonは、AIに限らず、統計解析やウェブプログラミング、科学技術計算といった要求にも応じることが可能です。
今からでもPythonを身につけることができれば、あらゆる需要に対応できる高度IT人材として活躍できることでしょう。